「商品先物取引で被った損失を取り戻せる」などとうたい、高額な金銭を支払わせる㈱コムに関する注意喚起
令和2年8月5日
引用 消費者庁
消費者に対して突然電話をかけ、「過去に商品先物取引で被った損失を取り戻せる」などとうたい、多額の金銭を支払わせる事業者に関する相談が、各地の消費生活センター等に数多く寄せられています。
消費者庁が調査を行ったところ、株式会社コム(以下「コム」といいます。)との取引において、消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(不実告知)を確認したため、消費者安全法(平成21 年法律第50 号)第38 条第1項の規定に基づき、消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報を公表し、消費者の皆様に注意を呼びかけます。
また、この情報を都道府県及び市町村に提供し、周知します。
1 事業者の概要(注1)
名 称 :株式会社コム(法人番号7010001176617)(注2)
所在地 :東京都千代田区西神田二丁目8番9号 ウインド水道橋3階
代表者 :野田 翔太
(注1)商業登記されている内容です。
(注2)同名又は類似名の事業者と間違えないようご注意ください。
2 具体的な事例の概要
コムは、「コム総合探偵事務所」という屋号を用いて、探偵業法第2条第2項に規定する探偵業を営んでいます。コムが、消費者に多額の金銭を支払わせる典型的な手口は次のとおりです。
(1) コムは、過去に商品先物取引で損失を被った消費者に対し、電話で契約を勧誘します。
コムは、消費者に対して突然電話をかけ、
・ 「あなたは、オリエント貿易との取引で損失を被った経験がありますよね。」などと切り出します。
消費者が、かつて、オリエント貿易株式会社(昭和34 年設立の商品先物取引業者。平成27 年12 月に清算結了し、現在は存在しません。以下「オリエント貿易」といいます。)を介した商品先物取引で損失を被ったことがあると答えると、コムは、
・ 「オリエント貿易のやり方は、違法取引です。そういう業者に対しては、投資によって被った損失についても取戻しの請求をすることができます。必ず損失を全て取り戻してあげます。」、「商品先物取引の損失は、返還請求に時効がなくなりました。」
・ 「当社が、オリエント貿易の行った詐欺商法の証拠となる調査報告書を作成します。当社が紹介する弁護士が調査報告書に基づいて、オリエント貿易に対して損失を取り戻す裁判をすれば、必ずお金を取り戻せます。」
などと告げた上で、「調査費用」などの名目で、約30 万円から約50 万円という高額な費用の支払を求めます。
消費者は、最初は半信半疑で乗り気ではありませんが、コムから何回か勧誘されるうちに次第にコムの言うことを信用するようになり、契約のためにコムの営業員と面会する約束をします。
また、コムは、「調査費用」などの名目で消費者に要求する金銭について、
・ 「調査費用は52 万9千円ですが、実はこの費用も、裁判でオリエント貿易から戻ってきます。」
・ 「調査費用は約 54 万円ですが、過去の損失と合わせて調査費用も返金されます。」
などと告げています。
(2) コムは、消費者に十分な説明をせずに、「調査委任契約書」などへの署名・捺印を求め、「調査委任契約」を締結させます。
コムの営業員は、消費者と面会した際に、改めて前記(1)のようなことを告げた上で、「調査委任契約書」、「重要事項説明書」などを消費者に示し、署名・捺印するように求めます。
この「調査委任契約書」では、「調査内容」について、オリエント貿易の「法人及び役員等の情報収集」や、「特定場所での写真撮影、聞き込み等の調査」と記載されるだけであり、コムが、前記(1)のように告げた、過去の商品先物取引で被った損失を取り戻すために必要な証拠収集や資料作成を行う旨は記載されていませんが、コムの営業員は、消費者に対して、これらの書面の内容についての詳しい説明をしません。
そのため、消費者は、コムと契約すれば、過去の商品先物取引で被った損失を取り戻すために必要な証拠収集や資料作成をコムが行ってくれると信じたままであり、これらの書面の内容をほとんど確認せずに署名・捺印し、「調査委任契約」を締結します。
(3) コムは、調査委任契約に基づく「調査報告書」を消費者に提供した後、返還請求をするには追加の調査が必要であるなどと告げ、更なる金銭の支払を要求します。
前記(2)の調査委任契約を締結してからしばらく後に、コムは消費者に、「調査報告書」を提供します。
しかし、調査報告書には、オリエント貿易の登記情報、オリエント貿易の関連会社の10 年以上前の企業情報、オリエント貿易が過去に入居していたものの現在はオリエント貿易とは全く関係のない建物の写真、オリエント貿易の元代表取締役の住居の写真などが掲載されているだけで、消費者が被った損失の返還請求に役立つような情報は全く記載されていません。
消費者が、損失の返還請求に役立つような報告がないことを不審に思い、コムに問い合わせると、コムは、
・ 「まだ調査の途中です。もっと費用をかけて調べないと返還請求できません。他の会社も被害回復に動き始めています。早くしないとあなたの取り分がなくなってしまいます。」
などと、損失の返還請求をするには追加調査が必要であると告げ、更に高額な費用の支払を求めます。
この時点で、コムの勧誘がおかしいことに気付き、消費生活センターなどに相談する消費者もいますが、一部の消費者は、追加の調査を依頼しなければ損失を取り戻すことができなくなると考え、2回目の調査委任契約を締結し、金銭を支払います。
しかしながら、2回目の調査委任契約に基づいて送られてくる調査報告書にも、返還請求に役立つような記載は全くありません。
結局、コムは、最初に消費者を勧誘した時に告げていたことに反して、消費者が被った損失の返還請求に役立つような報告をせず、消費者に弁護士を紹介することもしません。
したがって、消費者は、過去の商品先物取引で被った損失を取り戻すことはできず、コムに支払った多額の金銭も返還されないので、新たに金銭被害を受けることになります。
なお、一部の消費者は、3回目の調査委任契約を締結し、更なる金銭被害を受けています。
3 消費者庁が確認した事実
(1) 消費者安全法に規定する消費者事故等(不実告知)
コムは、前記2(2)の調査委任契約を勧誘するに当たり、勧誘時には、消費者がオリエント貿易を介した商品先物取引で被った損失相当額をオリエント貿易に請求して支払わせることができるに足る事情は見当たらないにもかかわらず、消費者に対し、
・ 「オリエント貿易のやり方は、違法取引です。そういう業者に対しては、投資によって被った損失についても取戻しの請求をすることができます。必ず損失を全て取り戻してあげます。」、「商品先物取引の損失は、返還請求に時効がなくなりました。」、「調査費用は52 万9千円ですが、実はこの費用も、裁判でオリエント貿易から戻ってきます。」
・ 「当社が、オリエント貿易の行った詐欺商法の証拠となる調査報告書を作成します。当社が紹介する弁護士が調査報告書に基づいて、オリエント貿易に対して損失を取り戻す裁判をすれば、必ずお金を取り戻せます。」、「調査費用は約54 万円ですが、過去の損失と合わせて調査費用も返金されます。」
などと、あたかも、コムと「調査委任契約」を締結して「調査費用」を支払いさえすれば、消費者が被った損失に相当する金銭と消費者が支払う「調査費用」に相当する金銭の支払を請求する裁判を起こすことができ、その訴訟を通じて、これらをオリエント貿易に支払わせることができるかのように告げていました。
(2) その他の事実
コムは、前記2(2)の調査委任契約を締結した消費者に、「調査費用」などの名目で、約30 万円から約50 万円という高額な金銭を支払わせていました。
しかし、コムが調査委任契約を締結した各消費者に提供していた調査報告書の内容は全く同一であり、コムは、調査委任契約に基づき新たな調査を行うことなく、調査報告書を複製して使い回していました。
(3) 本件を公表する理由
コムは、前記(1)のような消費者事故等を生じさせていたほか、新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言発令中も、消費者に「近くまで来ているので会って話がしたい。」などと要請して面会し、オリエント貿易とは別の商品先物取引業者に関して、前記2(1)と同様の勧誘を行い、契約を締結させていました。
コムは、現在も営業を続けており、探偵業の廃止の届出もしていないことから、今後も、コムによる本件と同様又は類似の消費者被害が発生する可能性が高いと考えられます。
該当する方は早めに専門家へ相談してください。
専門でないと、
「あきらめなさい」
「どうせ取り返せない」などと言われます。
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