暗号資産(仮想通貨)に関連する制度整備について【 金融庁 】
金融庁より抜粋
暗号資産に係る法制度の整備(2016年法改正)
1.MT GOXの事案について
○ビットコインの売買業務を行っていたMTGOX社について、破産手続が開始(2014年)
2.国際的な議論の状況
○G7エルマウ・サミット首脳宣言(2015年6月)
「我々は、仮想通貨及びその他の新たな支払手段の適切な規制を含め、全ての金融の流れの透明性拡大を 確保するために更なる行動をとる。 」
○FATF(金融活動作業部会)ガイダンス(2015年6月)
「各国は、仮想通貨と法定通貨を交換する交換所に対し、登録・免許制を課すとともに、顧客の本人確認義務 等のマネーロンダリング・テロ資金供与規制を課すべきである。」
3.資金決済法・犯罪収益移転防止法等の改正(2017年4月施行)
○暗号資産の交換業者に登録制を導入
・口座開設時における本人確認等を義務付け
・利用者保護の観点から、一定の制度的枠組みを整備
(最低資本金、顧客に対する情報提供、顧客財産と業者財産の分別管理、システムの安全管理 など)
暗号資産に係る法制度の整備(2019年法改正)
4.暗号資産を取り巻く環境の変化
顧客の暗号資産の流出事案が発生
暗号資産が投機対象化
事業規模の急拡大の一方で、交換業者の態勢整備が不十分
暗号資産を用いた新たな取引が登場(証拠金取引、ICO)
⇒ 「仮想通貨交換業等に関する研究会」を11回にわたり開催(2018年4月~12月)し、暗号資産交換業等を巡る諸問題についての制度的な対応を検討
5.資金決済法・金融商品取引法等の改正(2019年6月公布、2020年5月施行)
○利用者保護の確保やルールの明確化のための制度整備
○国際的な動向等を踏まえ、法令上の呼称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更
2019年法改正及び今般の政府令改正等の概要①
(暗号資産の交換・管理に関する業務への対応)
暗号資産の流出リスクへの対応
○交換業者が顧客から預かっていた暗号資産のうち、ホットウォレット(オンライン)で管理していた暗号資産が流出する事案が複数発生
↓
○交換業者に対し、業務の円滑な遂行等のために必要なもの(顧客から預かる暗号資産全量の5%を上限)を除き、顧客の暗号資産を信頼性の高い方法(コールドウォレット等)で管理することを義務付け
ホットウォレットで管理する顧客の暗号資産については、別途、見合いの弁済原資(同種・同量の暗号資産)の保持を義務付け
過剰な広告・勧誘への対応
○交換業者による過剰な表現を用いた広告・勧誘
↓
○広告・勧誘規制を整備
・虚偽表示・誇大広告の禁止
・投機を助長するような広告・勧誘の禁止 など
暗号資産の管理のみを行う業者への対応
○FATF(マネロン対策等を扱う国際会議)が、暗号資産の管理のみを行う業者(カストディ業者)について、各国協調して規制を課すことを求める勧告を採択〔2018年10月〕
↓
○カストディ業者に対し、暗号資産交換業規制のうち、暗号資産の管理に関する規制を適用(本人確認義務、分別管理義務 など)
2019年法改正及び今般の政府令改正等の概要②
(暗号資産の取引の適正化等に向けた対応)
問題がある暗号資産への対応
○移転記録が公開されずマネロンに利用されやすいなどの問題がある暗号資産が登場
↓
○交換業者が取り扱う暗号資産の変更を事前届出とし、問題がないかチェックする仕組みを整備
(注)交換業者が取り扱う暗号資産を審査する自主規制機関とも連携
暗号資産を用いた不公正な行為への対応
○暗号資産の取引において、不当な価格操作等が行われている、との指摘
↓
○風説の流布・価格操作等の不公正な行為を禁止
暗号資産に関するその他の対応
○交換業者の倒産時に、預かっていた暗号資産を顧客に優先的に返還するための規定を整備
2019年法改正及び今般の政府令改正等の概要③
(暗号資産を用いた証拠金取引への対応)
○国内の暗号資産の取引の約8割を占める証拠金取引について、現状では規制対象外
○暗号資産の有用性について評価が定まっておらず、また現時点では専ら 投機を助長しているとの指摘もある中で、積極的な社会的意義を見出し難い
↓
○暗号資産を原資産とするデリバティブ取引を金商法の規制対象に追加 ⇒ 店頭デリバティブ取引を業として行う場合には、第一種金融商品取引業登録が必要
○外国為替証拠金取引(FX取引)と同様に、金商法上の規制(販売・勧誘規制等)を整備
・証拠金の上限倍率(レバレッジ倍率)を、以下の通り設定
個人向け取引:主要な暗号資産であっても価格変動が激しいものが複数存在していることや、
顧客に対する規制の簡明性確保の観点を踏まえ、暗号資産の種類によらず2倍とする
法人向け取引:時々の価格変動に基づく必要な証拠金率を、暗号資産のペア毎に週次で算出する
・暗号資産の特性に関する規制について、暗号資産交換業者に求める対応と同様に整備
(暗号資産の性質に関する説明義務、問題がある暗号資産の取扱禁止、広告に関する規制など)
2019年法改正及び今般の政府令改正等の概要④
(ICO(STO)への対応①
○ICOに明確な定義はないが、企業等がブロックチェーン技術等を用いて電子的にトークンを発行して、投資家から資金を調達する行為の総称とされている(投資家が収益分配を受ける権利を有する場合はSTOとも呼ばれる)
○従来、ICOに適用されるルールが不明確
[指摘されているメリット]
○発行コストや管理コストが低下する可能性
○発行と流通を1つのプラットフォームで行える
[指摘されている懸念点]
○詐欺事案、ずさんな計画に基づく事案の増加
○流動性が増すことによる被害の拡大リスク
○流出リスクなどの新たなリスク
⇓
○投資者被害が多発すると、適切な案件への投資も委縮する等して、イノベーションを阻害するおそれ
⇒ 発行者・仲介業者による行為の適切性を確保することが、イノベーション・投資者保護の両面から重要
2019年法改正及び今般の政府令改正等の概要⑤
(ICO(STO)への対応②)
○収益分配を受ける権利が付与されたトークンについて、
・投資家に暗号資産を対価としてトークンを発行する行為に、金商法が適用されることを明確化
・発行者による投資家への情報開示の制度やトークンの売買の仲介業者に対する販売・勧誘規制等を整備
○また、ブロックチェーン等を利用した集団投資スキームは、個人が容易に投資できるようになり、流通性や詐欺等のリスクが増す可能性があることから、発行者開示の適用基準が厳しい(1)のカテゴリーの有価証券と位置付け
(ただし、保有者が 「一定の投資家」(適格機関投資家、資本金5,000万円以上の法人、証券口座開設後1年以上かつ投資性金融資産・暗号資産の合計残高が1億円以上の個人など)に技術的に制限されており、かつ、トークンの譲渡に発行者の承諾が必要であるものは、(2)のカテゴリーのままとする)
(参考)有価証券の分類
(1)株式・公社債・投資信託 など
発行者の開示:50名以上の一般投資家への勧誘 + 発行額1億円以上の場合
売買等を行う業者:第一種金融商品取引業(最低資本金:5,000万円)
(2)集団投資スキーム など
※ 投資家から調達した資金・暗号資産を用いて事業を行い、その収益を投資家に分配するもの
発行者の開示:500名以上の投資家の保有 + 発行額1億円以上 + 出資金の50%以上を有価証券に投資する場合
売買等を行う業者:第二種金融商品取引業(最低資本金:1,000万円)