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投資被害 実態なき夢の資産運用 80億円投資詐欺事件 FPが言葉巧みに勧誘

実態なき夢の資産運用 80億円投資詐欺事件「早い者勝ち、NISAよりお薦め」FPが言葉巧みに勧誘

令和7年7月20日
引用 日本経済新聞

うますぎるもうけ話には裏がある。東京都内の会社が「年利20~30%で5年後に元本償還」という夢のような株や社債を発行した。個人投資家が群がり約80億円を集めたが事業に実態はなく、自転車操業の末に破綻。幹部らは詐欺罪に問われる。延べ1300人に貴重な老後資金などを出させたのは言葉巧みなファイナンシャルプランナー(FP)たちだった。

大学を中退し、個人代理店として英語教材などを営業販売していた男(72)はある日、新たな事業を思いついた。病院が金融機関から融資を受ける際に債務を保証し、病院から収入を得るスキーム。「マーケットが大きく病院側にも喜ばれる」と知人を仲間に引き入れ、2014年10月に債務保証会社を設立した。

事業を始めるには損害保険会社との契約に向けて10億円が必要だと考え、資金調達のため年利30%で5年後に元本償還という種類株の発行を17年に始めた。仲間のひとりが「有能なセールスマン」という触れ込みで連れてきたコンサルティング会社代表(47)に破格の報酬を約束し、営業を委託した。

◾️破産

あまりの好条件に違和感を覚えた投資家もいたようだ。18年11月、情報提供を受けて調査を始めた関東財務局から発行状況などに関する質問状が会社に届いた。後の裁判における検察側の説明によると、同社はこの時すでに250人以上から12億円強を集めていた。男らは財務局にウソの回答をしつつ株の発行を中止し、国の登録が必要ない「少人数私募債」の体裁に変えて資金集めを継続。「財務局が調べたときに契約書の形があればいい」とニセの書類も用意した。

「大手保険会社が絡んでいるので元本保証ができるし倒産もしない」「少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)よりもお薦め」――。コンサル会社の勧誘員たちは全国へ飛び、ホテルの喫茶店やファミレスで顧客に偽りの営業文句を重ねた。実際は保険会社も病院も絡んでいなかったが「早い者勝ちで限られた人にだけ紹介している」とささやき、違法な無登録営業を続けた。

集めた金をそのまま配当金や償還金などに回す男らのスキームは典型的な「自転車操業」だ。資金繰りは当然のように行き詰まる。男らは22年ごろには「まもなく支払いが滞る」と認識していたが、償還期限や利率をわずかに変えながらなお58回にわたって社債の発行を続けた。検察側によると、さらに985人の投資家から約65億円を集めた。

23年2月末にいよいよ配当を支払えなくなり、同10月に破産。被害者の話を聞いた警視庁が動き、24年5~6月に男3人は金融商品取引法違反(無登録営業)と詐欺の容疑で逮捕された。

逮捕された男のひとりは銀行勤務の経験があった。社債について裁判で「一般投資家への金融商品として普通に考えておかしいという認識はあった」と明かしたが「画期的な事業で実現可能性も高いと考えていた」と主張した。もうひとりの男も「スキームが素晴らしいので絶対できる。事業が軌道に乗れば配当の支払いは楽勝だった」とうそぶいた。

◾️急増

主犯の男は法廷でも「10億円があればスキームを稼働できた」と言い張った。「投資家をだまそうとは思っていなかったのか」と問われ「もちろんです」と即答した。だが、25年4月の東京地裁判決によると、3人は必要だったはずの10億円を上回る少なくとも11億3000万円を私的に流用している。裁判では飲食代や遊興費といった使途も判明した。

判決は「支払い停止を先延ばしするために社債の発行を続けた」と認定。「悪質で被害結果が重く、利欲的で身勝手な動機で犯行に及んだ」と強く非難し、主犯の男に懲役5年と罰金400万円、残る2人に懲役4年と罰金200万円の実刑判決を言い渡した。主犯の男を含む2人は確定し、残る1人が控訴して東京高裁で争っている。

投資詐欺の被害は急増している。未公開株や社債の取引を装って資金をだまし取る「利殖勧誘事犯」について全国の警察が受理した相談件数は24年に3310件と4年で8割増えた。狙われているのは中高年の老後資産だ。相談者で多かったのは60代以上(34%)で、50代(22%)と40代(16%)が続いた。

今回の事件の社債について、検察側は「常識に沿って判断すれば極めて高いリスクがある粗悪な金融商品」と指摘した。なぜ投資家たちは「紙くず同然の社債券」(検察側)にだまされたのか。

勧誘を請け負ったコンサル会社の勧誘員には国家資格「ファイナンシャル・プランニング技能士」を持つFPが複数いた。保険や老後の資産運用などライフプランの相談を受けながら非現実的な株や社債を言葉巧みに薦め、顧客の輪は口コミを中心に広がった。同僚や家族からの紹介が多く「夫が国内旅行ツアーで知り合った」というケースもあった。

会社の資金繰りが逼迫しても、勧誘員たちは男らに「早く次の募集を」と求め続けた。報酬目当てだろうが、そもそも事業が稼働していない実態を知らされていなかったという。事件ではそんな勧誘員たちも罪に問われ、次々と有罪判決を受けている。投資家の貴重な蓄えは失われたまま、被害回復はごく一部にとどまっている。

 

 


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